山口製茶の創業のきっかけ
「実はミカン農家になるはずだったんです」
山口小百合さん(現山口製茶の代表:以下、山口さん)は、創業について聞くと、そのように答えました。
きっかけは土壌調査でした。
山口製茶は、山口さんの父と母が始めました。
元々は、父がミカンを植えようとしたところ、ミカンには不向きな土だったそう。
しかしお茶作りには最高の舞台でした。
酒谷川が流れ、よく霧も出る。
清流の霧が育てた酒谷茶の誕生です。
「今でもお茶園を見ると父の背中が見えるようです」
父が引退した後もその想いを引き継ぎ、まごころを込めてお茶づくりをしています。
お茶にかけるこだわりと想い
「大変なこともあるけれど、寒い中一生懸命すくすく育った新茶の美しい芽を見ると疲れが吹き飛びます」
一歩一歩共に成長してきたお茶園を見て山口さんはニコッと笑いました。
しかし、山口さんの父が他界してからはとても大変な日々が続いたそう。
「最初は後継者であったことのプレッシャーがあり、迷いながらお茶づくりをしていました。反発もありました。けれど、いざ自分だけでお茶と向かい合う時が来て、もっと父にいろいろ聞けば良かったと後悔しました。答えのない中、がむしゃらにお茶作りをしていた感覚です。」
父が他界してから、10年間走り続けてきた山口さん。最近は少し心境の変化があったそうです。
「1年1年前へ前へ進めてきました。力を注いだ分お茶が応えてくれます。厳しい状況でもお客様に美味しいと言葉をかけられる度に力が湧いてきます。本当にありがたいことです。遠回りをしましたが、今は自分のお茶が愛しく納得してお茶づくりができています。もう父の背中を追いかけられないけれど、対話しながらこれからもやっていきます。遺影に毎日話しかけちゃうんです(笑)きっと喜んでくれていると思います。」
そう力強く応えてくれた山口さん。お茶園の声を聴きながらお茶と向かい合う姿が、朝露で輝く新芽のようにキラキラとしています。
母と2人でこれからも山口製茶を守っていきたいそうです。
山口製茶の特徴
山口製茶の大きな強みの一つに”女性目線”があります。
商品パッケージも女性向けに新しく作りました。
山口製茶のお茶は、優しいけれどしっかり芯のあるお茶です。
「私は経験が少ない分、まだまだ成長できます。経験が邪魔をしないので、スポンジのようにたくさん吸収して柔らかくお茶づくりができます。これからもいろいろと新しいことを取り入れて挑戦しようと思っています。」
何事も挑戦だと日々勉強中だと教えていただきました。
昨年からは新しい品種にもチャレンジ中だということです。
山口製茶のお茶園は寒暖差がある地域にあります。
高地にあり、霧も深いのでお茶づくりに最適な場所です。香り高くコクのあるまろやかな口あたりのお茶ができます。
また、お茶の品種は8種類。一つの農家に、品種がたくさんあることも強みです。
それぞれの品種の強みを引き出すことで最高の逸品ができます。
自園自製、お茶のブレンドも全て手作業で行っているので、とても難しいそう。
その中で自分が思い描いたお茶ができた時、本当に達成感があり嬉しい気持ちになります。
ひなたGAP取得農園
宮崎県:宮崎県版GAP「ひなたGAP」
ひなたGAP認証制度は、県が定めるGAP基準値に基づいた取り組み(良い農業)が実践できていることを県が認証するもの。
最後に
お茶作りも子育ても全部経験になっていて、これからもお茶っぱと家族と一緒に成長していきたいと山口さんは笑いました。